琉球大学 熱帯生物圏研究センターの松﨑 吾朗 教授を代表とする研究チームが、琉球大学公認としては初めてとなる研究クラウドファンディングに挑戦し、このたび目標を達成しました。
この結果を受けて、琉球大学では2019年12月より、結核菌が免疫機能をかいくぐるプロセスに着目した「免疫療法」に関する新たな基礎研究をスタートさせます。
<発表のポイント>
◆琉球大学は初めて、公認の研究クラウドファンディングを実施した
◆研究支援特化型のプラットフォームを活用し、目標を達成した
◆研究者の自由な発案による基礎的研究を、広く社会に募るルートを開拓した
<発表概要>
琉球大学 熱帯生物圏研究センターの松﨑 吾朗 教授・高江洲 義一 准教授の研究グループは、2019年9月から10月までの2ヶ月間、アカデミスト株式会社が提供する研究費獲得に特化したクラウドファンディング・プラットフォーム「academist」を通じた寄付型のクラウドファンディングを実施し、このたび目標を達成しました。
プロジェクト名:結核の新たな治療法として「免疫療法」を確立したい!
実施期間:2019年9月2日(月)~10月30日(水) 19:00
目標金額:75万円
タイプ:寄付型
期間中、10月15日にはファーストゴール(75万円)を達成し、セカンドゴール(100万円)を急きょ設定しました。最終的にセカンドゴールも達成し、支援総額は1,065,001円(達成率=142%)、91名の方にサポーターとなって頂き、研究プロジェクトをスタートさせられる運びとなりました。
研究クラウドファンディングは、従来からある競争的な公的研究費や企業による共同研究費などに加えて、広く社会に研究計画や研究への思いを提示し、小さな応援をたくさん募るという新しいスタイルの研究費獲得手段です。「academist」は学術研究に特化した日本初のプラットフォームであり、人文・社会学系から理工系、医歯薬系まで幅広い研究分野のプロジェクトが日々掲載され、支援を集めています。琉球大学では今後も、研究クラウドファンディングを大学と社会とをつなぐ有効な手段ととらえ、大学における研究をより多くの方に支援して頂けるよう、これを正しく運用してまいります。
<今回の研究プロジェクトについて>
結核は世界3大感染症の一つで、その病原体である結核菌は免疫系による認識と排除を逃れ、免疫細胞の一つであるマクロファージに感染して増殖します。通常、体外から入り込んだ細菌はマクロファージに取り込まれると殺菌されますが、結核菌はこの殺菌作用を引き起こすのに重要な分子の機能を抑えることで、結果的に「免疫細胞内で生き延びる」ことができるのです。
現在、結核の治療には抗生物質が用いられていますが、世界中で抗生物質が効かない耐性菌の存在が確認されており、抗生物質だけに頼らない対策が求められています。琉球大学の松﨑教授・高江洲准教授の研究グループでは、結核菌が示す「殺菌作用を抑えるはたらき」に着目し、このはたらきを妨げることによって、免疫細胞が結核菌を正しく攻撃し、排除できるのではないかと考えました。この新しいアイディアについて幾つか予備的な実験を行った上で、今回のクラウドファンディングに挑戦しました。
<クラウドファンディング「academist」>
アカデミストは、「開かれた学術業界を実現し、研究者の価値を最大化することで、学問の発展に貢献する」ことをミッションに、研究費獲得のためのクラウドファンディングサービス「academist」および学術系メディア「academist Journal」の運営を行っております。academistは、日本初の研究費獲得に特化したクラウドファンディングサービスです。これまでに約140名の研究者がクラウドファンディングプロジェクトに挑戦し、総額約1.2億円の研究費の獲得に成功してきました。
<用語解説>
クラウドファンディング
群衆(crowd)と資金調達(funding)を組み合わせた造語。「アイディア実現のための資金を、インターネットを通じて多数の支援者から集める手法」を指す。大学における研究クラウドファンディングは、政府予算、共同研究、奨学寄付金に続く第4のファンディングとして、さらに大学の活動の広告宣伝、アウトリーチの取り組みとしても注目を集めている。