伊澤雅子名誉教授(現北九州市立自然史・歴史博物館館長)と中西希博士(琉球大学大学院修了、現同博物館学芸員)による2017年2月に長崎県対馬において発見したカワウソに関する研究論文が、日本哺乳類学会論文賞を受賞しました。(両氏とも研究当時は本学理学部海洋自然科学科に在籍)。
なお、本学では2017年8月に環境省にて記者発表を行い、全国的に大きな反響を呼びました。
受賞のコメント
中西希博士 「日本において絶滅したと考えられたカワウソの再発見が多くの人の関心を集め、学術的な記載が評価されたことを嬉しく思います。」
伊澤雅子名誉教授 「長く調査を続けている地域でもまだまだ新しい発見があるというのが、自然はすごいし、楽しいと思います。」
論文タイトル:Rediscovery of otters on the Tsushima Islands, Japan by trail cameras
論文著者:Nozomi Nakanishi and Masako Izawa(中西 希・伊澤雅子)
掲載誌:Mammal Study 44: 215–220(2019年)
DOI: 10.3106/ms2018-0043(https://doi.org/10.3106/ms2018-0043)
研究論文の概要
日本のカワウソは20世紀初頭まで広く全国に分布していましたが、日本では絶滅したと考えられていました。九州と朝鮮半島の間に位置する対島のカワウソの記録は、1735年から1809年にかけて2つの情報しかなく、19世紀半ばからその存在は確認されていませんでした。長崎県対馬でツシマヤマネコのモニタリング調査のために赤外線カメラを設置したところ、2017年2月6日と7月16日に田ノ浜地区、2017年10月1日と3日に佐護地区で計4回カワウソが記録されました。日本においては、1979年に高知県で最後の記録が出て以来、38年ぶりの生体確認となりました。
*その後、環境省による緊急調査が行われ、対馬島内で採集されたカワウソの糞による分子遺伝子分析が実施されました(http://www.env.go.jp/press/104655.html)。その結果、対馬に生息しているカワウソは、ユーラシアカワウソであることが明らかになり、韓国から海を渡ってきた可能性が示唆されています。