琉球大学熱帯生物圏研究センターの守田昌哉准教授らと宮崎大学農学部の共同研究グループによる研究成果が、現地時間10月16日(BST00:01)にMarine Biology誌に公表されました。
<発表のポイント>
8月から9月の時期に産卵するミドリイシ属サンゴ(ヤッコミドリイシ)について、今まで1種だと考えられていましたが、実は2種いたことを発見しました(1種は隠蔽種 – 本来同種として扱われていたが別種として扱うべきグループ)。さらに、その種分化が産卵時期の違いによることを明快に示す研究結果を得ました。これは、サンゴの種分化がわずかな産卵日の違いによっても起こることを示し、サンゴが多様性に富む理由の一つであることを意味しています。
<発表概要>
琉球大学熱帯生物圏研究センターの守田昌哉准教授のグループ(古川真央氏(修士課程)、北之坊誠也博士)と宮崎大学農学部の深見裕伸教授らが、造礁サンゴであるヤッコミドリイシ(Acropora divaricata)がわずかな産卵日の違いにより別種に分化したことを発見し、その成果論文が国際科学誌「Marine Biology」に掲載されました。
ミドリイシ属サンゴの多く(瀬底島では少なくとも20種以上)は6月に多くの種が同調して産卵しますが、ヤッコミドリイシは8月から9月に産卵します。8月から9月の時期に産卵する種は少なく(およそ10種が産卵するが、異種間の同調性が高くない)、ヤッコミドリイシはある程度他の種から独立して繁殖していると考えられています。造礁サンゴのミドリイシ属は種の同定が難しいことが知られています。同じ種の中でも群体の形状、枝の形状や長さなども非常に多様です。
私たち研究チームは、サンゴを海中で観察することを続けていて、その過程でヤッコミドリイシが8〜9月に産卵すること、さらに形態が明確に異なる群体が生息していることに気がつきました。これが本研究を始めたきっかけです。
このヤッコミドリイシには2形態型(枝の細い“細枝型”-Slender typeと太い“太枝型” -Robust type, 下図参照)が存在しています。今回、これら2型の産卵日が重ならないために交雑が起こりにくくなり、このことが別種に分化した要因であると結論付けました。
この2型間で卵と精子は受精するにもかかわらず、遺伝構造は相互に独立していることを、DNAを用いた分子系統学的および集団遺伝学的に明らかにしました。これは、2型間では繁殖できておらず、それぞれ別種であることを意味しています。さらに、このRobust typeはどの種も当てはまらないためヤッコミドリイシの隠蔽種(同種として扱われていたが、別種として扱うべきグループ)であることも解りました。
この研究成果は、ミドリイシ属サンゴは産卵日を変動させることによって別種に分化していくことを解明したものであり、沖縄のサンゴ礁を支えているミドリイシ属の多様性が生まれる一端を示していると考えています。
<論文情報>
1. Differences in spawning time drive cryptic speciation in the coral Acropora divaricata
(産卵日の違いがヤッコミドリイシの種分化を誘導する)
2. Marine Biology
3. Mao Furukawa, Seiya Kitanobo, Hironobu Fukami, Masaya Morita*
4. https://doi.org/10.1007/s00227-020-03781-z
5. https://link.springer.com/article/10.1007/s00227-020-03781-z