医学研究科 ウイルス学講座斉藤美加助教が、第8回ゼロマラリア賞を受賞し、令和3年5月10日、本学で授与式を行いました。
この賞はNPO法人 マラリア・ノーモア・ジャパンが「2030年までにゼロマラリアを達成する」という国際社会の目標に寄与する活動に取り組む、あらゆる分野の個人、団体を対象に毎年世界マラリアの日に贈られる賞です。第3回では本学保健学科の小林潤教授も同賞を受賞しています。
斉藤美加助教は、「沖縄のマラリア等蚊媒介性感染症対策の伝承およびシチズンサイエンス実践研究」での受賞となりました。沖縄での蚊媒介性感染症の疫学研究を長年行い、最近では、沖縄の感染症対策の歴史特に八重山のマラリア対策史について研究、発信を精力的に行なっています。また、住民参加による蚊媒介性感染症の評価と安全安心な地域づくりの実践研究が総合的に評価されました。
受賞にあたり、斉藤美加助教は「この度、このような栄誉ある賞を賜り、身にあまる光栄です。これまでの研究にご協力・ご支援いただきました皆様に、心より感謝申し上げます。賞を励みに、今後も、疫学研究や実践研究を通して、蚊媒介性感染症のない地域づくりや社会実装に取り組み、また、沖縄の先人たちの感染症との戦いをもっと多くの方に伝えていこうと思います。」と挨拶しました。
NPO法人 マラリア・ノーモア・ジャパン 長島美紀理事からは「斉藤美加助教の、これまでの沖縄の蚊媒介性感染症である八重山のマラリア対策の歴史の再評価の取り組みとシチズンサイエンス実践による実証を高く評価しました。今後も引き続き、マラリア排除促進に尽力されることを期待します。」と今回の受賞者選出について語られました。
本学西田睦学長からは「沖縄の戦後の歴史からの教訓「命どう宝」の考えを、八重山のマラリアの歴史を通し、今の新型コロナ感染症対策に生かすべく、次世代へ、そして世界へと発信する社会的意義は大きいと思います。これからも、あらたな価値の創造へとの挑戦を続けていってほしいと思います。」と労いの言葉が述べられました。
多言語版ストーリーマップ「八重山のマラリア史」は2021年4月25日に公開しています。
斉藤美加助教 コメント全文
「この度、2021年4月25日世界マラリアデーに、酪農学園大学との共同研究により、多言語版ストーリーマップ 八重山のマラリア史(Forgotten history of Infectious diseases in Yaeyama area)」を公開します。これは、2019年に公開した日本語版八重山のマラリア史を多言語:英語、中国語、スペイン語に翻訳し、改訂を加えたものです。
COVID-19パンデミックに象徴されるように、21世紀は感染症の時代に入っていることを覚悟していかなければなりません。過去の感染症との闘いの歴史の再評価が、これほど求められていることはありません。沖縄の戦後の歴史は感染症との闘いの歴史といっても過言ではなく、特に、八重山にはもう一つの戦争と言われる戦争マラリアの災禍とマラリアを克服した世界に誇れる歴史があります。
多言語版にしたことで、世界の多くの人の目に留まり、八重山地方のマラリアの歴史を知ってもらい、過去の苦難の八重山のような環境下で、今なおマラリアに苦しむ国々にマラリアや感染症のない国づくり、地域づくりへの勇気を持っていただき、SDGsの目標の一つであるゼロマラリアへの一助になることを目指しています。
来年、八重山はマラリア撲滅 (排除) 60周年を迎えます。しかし、世界的に八重山のマラリア排除は認定されていません。今こそ、八重山マラリア撲滅60周年を記念することでその偉業を讃え、お祝いする機運を高めていければと祈っています。」